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新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、各国において防疫対策のため国境をまたぐ往来を制限する措置が続いており、中国国内の機構に勤務する者が一時的に日本に帰国したまま、中国に戻れないという状況がしばらく続いておりました。
中国では最近になり徐々に中国国内に長期間勤務する者などを優先的に中国国内の入国制限を緩和し、中国国内の駐在員が中国に戻り始めてきていますが、当年に日中双方における勤務が生じていた場合には、日中双方での個人所得税の課税関係に留意する必要がございます。
中国では、2019年の税制改正により中国個人所得税法上の居住者・非居住者の区分はその年(暦年)における中国での滞在日数で区分され、中国滞在日数の区分に応じて課税範囲が定められている。
【中国における給与所得者の納税者区分と課税範囲】
一般的に中国現地法人に駐在する者は、中国にて1年以上滞在し勤務することが前提で日本を出国しており、日本出国日の翌日以降は日本の非居住者として取り扱われる。
【日本における給与所得者の納税者区分と課税範囲】
非居住者が日本国内の勤務に基づく給与を得ている場合、当該給与は国内源泉所得として日本国でも所得税が課され、日本親会社から支払われている給与は、当該給与の支払者が20.42%で源泉徴収納税を行う。
また、中国現地法人から支払われている給与は、原則として自ら確定申告を行う必要があるが、暦年における日本の滞在日数が183日以内で、中国現地法人が支払う給与について、最終的に日本親会社や日本の支店等が費用負担をしていない場合には、日中租税条約の短期滞在者免税規定を適用し、中国現地法人から支払われる給与は免税とすることができる。
春節休暇で日本に一時的に入国されていた駐在員の方々の多くは、新型コロナの感染拡大に伴い、意図せず日本国内での滞在が長期化し、日本国内滞在中は日本親会社にて中国業務を遠隔で行い日本の業務も行っている場合や、中国現地に戻ることが出来ないため日本国内での滞在日数が183日を超えた場合には、日中双方での所得税課税が生じ取り扱いが複雑となるため留意が必要。
【中国滞在日数が183日未満となった場合の納税者区分変更と課税範囲の変更】
なお、中国の非居住者で90日超183日未満の場合において日中租税条約の短期滞在者免税規定の適用は、相手国(日本)の居住者であることが前提となることから、当該短期滞在者免税規定の適用を受けることは現実には困難と考えられる。(日本では1年以上国外において就業することを前提で出国しており、日本では非居住者として取り扱われるため。)
日本国内の滞在日数が183日超となった場合、日中租税条約に基づく短期滞在者免税規定は適用されず、日本国内で勤務した日数に対応する中国国内払い給与についても日本での課税が発生。
日本の所得税法上は、どこの業務を行ったかではなく、どこで業務を行ったかで所得の源泉地が判定される(所得税法第161条1項第12号イ)。
【日本の滞在日数が183日超となった場合における課税範囲の変更】
非居住者の国外で支払われる国内源泉所得(中国現地法人が支払う中国払い給与)は、翌年2月16日から3月15日の確定申告期限内に、又は当該期間前に出国をする場合には出国の前日までに自ら確定申告及び納税を行う必要がある。
中国居住者が、日本滞在中に日本での勤務により日本の所得税が課された場合には、中国・日本双方で同一の所得(給与)に対して双方の国の所得税が課さていることになるが、税制度上における国際的二重課税とは、両国の制度上の課税所得範囲のうち重複する部分がある場合に、当該重複する所得について両国で課税されている状態をいう。
一般的な中国駐在者を例にすると、中国滞在6年未満の中国居住者(高級管理職を除く)の中国及び日本の課税範囲は以下の通りである。
中国では個々の状況により課税の取扱いが異なり、また地域によりその判断が異なることもあるので、各人の給与支払い状況、中国及び日本での滞在日数及び勤務状況等を正確に把握し整理したうえで、納税義務者の区分見直し、課税対象範囲の見直し、国外勤務の認定、外国税額控除の適用可能性など事前に税務当局への確認が肝要といえる。
以上
(担当:安達)
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