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【日本企業様向け】日本に入国する外国人の税務
ポイント
- 所得税の居住者・非居住者判定は、住所の有無と国内に住所を有すると推定されるか否か
- 所得税の課税対象範囲は、居住者（非永住者）は国外源泉所得以外の所得及び国外源泉所得のうち国内で支払われ又は国内に送金されるもの
非居住者は国内源泉所得のみ - 租税条約に基づく短期滞在者免税規定の適用の有無確認
- 住民税の納税義務判定は、3か月超の在留許可の有無及び1月1日に国内に住所を有するか否か
- 日本で納付すべき税金を会社が負担した場合にはグロスアップ計算が必要
- 帰国後年金脱退一時金を収受した場合には、支払い時に源泉徴収されるが、確定申告で還付を受けることができる
- 日本の非居住者は居住地国で外国税額控除により二重課税を排除
１．日本の（個人）所得税の納税義務者及び課税範囲
【日本の納税義務者の区分】
【納税義務者区分ごとの課税範囲】
- 国内において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合には、国内に住所を有すると者と推定され、居住者に区分されます。
つまり、入国時点で日本国内において職業に従事する期間が1年未満であることが明らかな場合を除き、国内において1年以上居住することを通常必要とする職業を有する者と推定され、日本の居住者に区分れます。このため、1年未満の期間における日本での勤務が明らかである場合には、契約書等で国内在留期間を明確にしておく必要があります。 - 入国後1年を経過する日まで住所を有しない場合には、入国後1年を経過する日までの間は非居住者、1年を経過する日の翌日以後は居住者に区分されます。
例：1年以内の短期出張で入国したものの、入国後1年を経過してしまった場合など。
なお、入国後住所を有しないが、1年を経過する日までの間に住所を有することとなった場合には、住所を有することとなった日の前日までは非居住者、住所を有することとなった日以後は居住者となります。
例：1年以内の短期出張で入国したものの、途中で1年以上の任期で日本法人に勤務することが決まった場合など。（出張から出向への切り替え） - 過去10年以内の日本国内での居住期間を確認し、非永住者に該当するか否か（5年以下）を確認します。非永住者に区分された場合の課税される所得の範囲は、国外源泉所得以外の所得と、国外源泉所得のうち日本で支払われまたは日本に送金されたもののみとなります。なお、非永住者が確定申告をする場合には、居住形態等に関する確認書を確定申告書に添付する必要があります。上記納税義務者の区分に応じ課税範囲が異なりますので、納税義務者区分の判定は実際の状況を適切に把握することが重要です。
２．日本での課税留意点（給与所得を中心に）
（１）課税範囲
給与所得の源泉地は、どこで勤務したかにより判断することとされており、日本国内の勤務に基づく給与は日本国内源泉所得とされます。
給与支払者の所在地は源泉地判定には関係しません。
なお、非居住者については租税条約の適用により一定の条件で国内勤務に基づく給与所得は免税となります。
【居住者（非永住者）の課税範囲】
非永住者以外の居住者は国内勤務期間分・国外勤務期間分すべてが課税対象となります。
【非居住者の課税範囲】
海外居住地国と日本との間の租税条約において短期滞在者免税規定が設けられており、当該短期滞在者免税の要件を満たす場合には、国内源泉所得の対象となる国外払い給与について免税となる。短期滞在者免税の適用要件は、以下のいずれの要件を満たすこと。
ⅰ）日本での滞在日数が年183日を超えないこと
ⅱ）給与支払いの雇用者は日本の居住者でないこと（これに代わるものから支払われる場合も当該支払者は日本の居住者に該当しないこと）
ⅲ）給与支払いの雇用者の日本にある恒久的施設等によって負担されていないこと。
なお、海外法人の日本支店や日本駐在員事務所の駐在員は、短期滞在者免税規定の適用を受けることができず、日本の滞在日数に限らず日本国内滞在期間中の勤務に基づく国外払い給与は国内源泉所得として日本で課税される。
（２）所得税の課税方法
- 日本の居住者である外国人
日本国内払い給与のみである場合には、一般的な日本人社員と同様に年末調整を行い、医療費控除や寄付金控除等追加の所得控除の適用を受ける場合には自ら確定申告を行います。
外国親会社等からの国外払い給与で課税対象となる部分がある場合には、確定申告において日本払い給与と合算して申告納税を行う必要があります。 - 日本の非居住者である外国人
日本国内払い給与のうち国内勤務期間分は、日本国内において給与を支払う者が 20.42％の税率で源泉徴収納税を行い、課税関係は完了します。
短期滞在者免税の適用がない非居住者の日本国内源泉（日本国内勤務期間分）の国外払い給与については、自ら確定申告を行い、20.42％の税率で納付をする必要があります。
なお、日本で課税された所得税については、居住地国で外国税額控除の適用を受けることで二重課税を排除することができます。
（３）住民税の課税
- 納税義務者
住民税は、3 か月超の在留許可があり、かつ 1 月 1 日時点で日本に住所がある外国人は、住民税の納税義務者となります。 - 課税範囲
原則として所得税と同様の取り扱いになります。また、租税条約において住民税が含まれているいる場合には、所得税同様租税条約による短期滞在者免税規定の適用を受けることができます。 - 課税方法
給与所得者の住民税は、前年の課税所得を基礎に、1 月 1 日時点における住所地の市区町村が住民税を賦課し、給与支払者が源泉徴収納税をすることになります。つまり、住民税は所得が生じた年の翌年に徴収されることになります。
３．実務対応上の留意
（１）日本で納税する税金を会社が負担した場合
本人が負担する税金を会社が負担した場合、当該税金負担相当は給与となり、かつ、当該負担額は税引き後の手取り金額と考えるため、税金計算上は税込み金額にグロスアップ計算を行う必要があります。
居住者期間中においては、毎月の源泉徴収時の税率を基礎にグロスアップ計算をし、年末調整において、年税額ベースの税率を基礎にグロスアップ計算の再計算を行います。
非居住者期間中の税金負担は、支払いの都度、源泉徴収税率 20.42％を基礎にグロスアップ計算を行います。
（２）帰国する場合
本国帰任により日本を出国する場合には、所得税についてはその年 1 月 1 日から出国日までの給与所得について給与支払い者側で年末調整を行います。
住民税については、その年 1 月 1 日 5 月 31 日までに出国の場合には、5 月徴収分までの住民税を給与支払者が一括徴収の上納税します。
また、出国年 1 月 1 日現在日本に住所を有していた者は、住民税の納税義務者となることから、6月から特別徴収が開始される出国年の住民税について、一括徴収か毎月納付の普通徴収のいずれかを選択し納付する必要があります。
なお、日本出国までに住民税を納めることができない場合には、出国前に、日本に居住する者の中から納税管理人を定め、市区町村に届出る必要があるとされています。
（３）帰国後に年金の脱退一時金を受給した場合
外国籍人が、日本の滞在期間中に国民年金及び厚生年金保険等に加入していた期間がある場合で、当該加入期間が 6 月以上ある者など一定の者は、帰国により脱退一時金を日本年金機構に請求することができます。（注：社会保険協定のある国の外国籍人は請求不要）
脱退一時金の支給を受けた場合、支給時に非居住者に対する支払いとして 20.42％で所得税が源泉徴収されます。
当該脱退一時金は、所得税法上退職所得に分類され、非居住者の退職所得の選択課税制度の適用を受けるため還付申告を行うことで、支給時に源泉徴収された所得税の還付を受けることができます。
なお、還付申告を行う場合には納税管理人の届出が必要となりますので、還付申告を含め税理士にご相談ください。
（４）海外居住地での外国税額控除
日本で課された所得税及び住民税について居住地国で外国税額控除を適用する場合、一般的に海外居住地の税務機関より日本の税務当局が発行する納税証明書の取得が求められますので、出国後の日本での対応について、日本側で勤務していた会社や税理士等にご相談ください。
以上
（担当：安達）