天津大野木邁伊茲諮詢有限公司
北京大野木邁伊茲諮詢有限公司

企業で外部の個人の通訳者等と契約して専門的なサービスの提供を受けるケース、短期間の臨時雇用（日本のアルバイト）的に個人と労務契約を締結して一定期間勤務してもらうケース、または非常勤の董事の職にある者に董事報酬を支払うといったケース等において、これらの労務報酬費用の支払いをする側の企業で、企業所得税法上の処理上、発票が必要な場合には、報酬の支払いをする企業側で必要な税務手続きをしたうえで、個人に代わって税務局で発票の代理発行を受けるというのが一般的です。
そこで労務報酬の税前控除（損金算入）のための手続きと、労務報酬を受け取る個人の個人所得税・増値税及び流通税付加費の税務処理について確認します。

労務報酬所得とは、個人が労務に従事して得た所得を指し、設計、装飾、据付け、製図、試験、テスト、医療、法律、会計、コンサルティング、講義、翻訳、検閲、書画、彫刻、映画・テレビ、録音、録画、公演、広告、展覧、技術サービス、紹介サービス、仲介サービス、代行サービス及びその他の労務に従事して得た所得を含む。
（「中華人民共和国個人所得税法実施条例」（国務院令第707号）第6条第（二）項）

「企業所得税税前控除証憑管理弁法」（国家税務総局公告2018年第28号）の第9条で企業の中国国内で発生した支出項目は増値税課税項目（以下「課税項目」と略称する）に属しするものとし、支払いを受ける相手方の税務登記の有無により、税前控除（損金算入）の要件となる証憑についてそれぞれ下記のとおり規定しています。

 

企業所得税の計算上で税前控除（損金算入）処理するための証憑

労務報酬にかかる増値税及び流通税付加費・・・居住者か非居住者かにより異なる

• 中国居住者個人（税務登記の有無にかかわらず）
  《増値税》――収入額が増値税の小規模納税人の要件を満たす場合は小規模納税人の税率3％（現在は時限軽減措置により適用税率1％）
  《流通税付加費》――納付する増値税の金額に対して都市維持建設税7％、教育費附加3％、地方教育費附加2％の合計12％
  （小規模納税人の場合は時限措置により、上記で算出した税額の50％を納付）
• 非居住者個人
  《増値税》――収入額に関わらず税率6％
  《流通税付加費》――納付を免除

増値税の免税点収入額・・・税務登記の有無により異なる

• 税務登記を行う必要のない機構・小額零細経営に従事する個人については、「増値税暫定条例」とその実施細則の個別納税の課税最低限に関する規定により、1回（1日）の売上高が300-500元以下（個人不動産賃貸所得は月次課税）と規定されており、この免税点を超える金額の場合には増値税の納税が必要になります。
• 税務登記を行っている個人であって増値税法上の小規模納税者である場合には、1か月の売上高が10万元（または四半期売上高が30万元を超えていない）未満の場合には、増値税が免税になります。

個人に対して労務報酬の支払いを行った企業は、原則として支払いを行う際に個人所得税を源泉徴収して、翌月の申告納付期限までに手続きを行うことになります。
2019年から施行されている現在の個人所得税法の施行前は、税務機関による発票の代理発行を受ける際には、支払い者である企業が個人に支払う金額について、その都度個人所得税を代理徴収して納税したうえで発票の発行を受ける必要がありました。
これが現在の個人所得税法の施行後は、中国に住所がある中国人個人や外国籍でも中国での居住者（暦年滞在183日以上）である場合には、個人総合所得について翌年の確定申告期間に年度確定申告を行う手続きが導入されたことにより、税務局が個人の総合所得項目（「労務報酬所得」「稿料所得」「特許権使用料所得」を含む）に係る発票の代理発行を受ける際に、その都度個人所得税を徴収しなくてもよくなり、その場合には原則として発票の備考欄に「個人所得税は支払側が源泉徴収する」と明記（税務担当者が備考欄の印字を忘れることもある）されるようになっています。
（総合所得項目以外の不動産所得等の代理発行発票については現在も発票発行時に個人所得税を納付する必要あり）
（「税収徴収管理法」第32条、第69条の規定に基づき、納税者が期限通りに税金を納付していない場合、または、源泉徴収義務者が期限通りに税金を代理納付していない場合には、税金を滞納した日から、1日あたり滞納税金の0.05％の滞納金が加算され、また源泉徴収義務者に対して、源泉徴収されていない税金の50%以上3倍以下の罰金が課されることになります。）

個人である張氏は天津A社と労務契約を締結して専門技術サービスを提供し、今月労務費5千元（税込み）を獲得したケースで、張氏が税務局での税務登記を行っている場合と行っていない場合で、支払いをする天津A社が手続きをすべき税金を計算すると下記のようになります。

（単位：人民元）

地域ごとに適用税率が異なる場合がありますので、手続きを行う際には、現地の税務局に確認のうえ対応するようにしてください。