登記抹消フローを簡略化し、申請書類を減らすことより、『市場主体の退出の利便性を実現することを目的に』、特定の条件を満たす企業に対して、通常の清算手続き以外に、簡易抹消制度を選択する権利を与えて、企業が登記機関(所轄工商局)に 公告申請を行い、 45 日の公示期間終了後 3 0 日 以内に 企業の工商登記抹消を認める制度です。
ここでいう特定条件とはネガティブリスト企業や信用情況の悪い企業以外の企業で①債権・債務がない企業、②設立後経営活動を行なっていない企業を指しています。「債権・債務がない」ということには簿外になっている労働債務(未払給与 等 )も税金債務(過去の税務手続きの誤り等による過少納付 等 )なども含まれます。
「指導意見」の実施から約 1 年間が経過しましたが、この制度の実務上の運用はどのようになっているのか気になるところですが、昨年 4 月頃に、弊社で天津地区のある日系企業の清算案件をお手伝いした際に、手続き上「簡易抹消制度」を使って工商登記の抹消を行ないましたが、「簡易抹消制度」は最後の工商登記証抹消の段階 で初めて適用可能になったわけであり、そこに至るまでの税務登記抹消 等 については従来どおりの手続きと期間を要しており、実態はあまり変わっていないというのが実情です。
確かに簡易抹消制度を利用できれば、コストと時間の節約が期待できますが、上記の「営業許可証の正式抹消」の欄で分かるように、税務局等の管理機関での通常の抹消手続きがすべて完了していることがこの制度利用の大前提ということですので、税務登記抹消手続きについて従来どおりのことが要求される限りは、目に見えて簡素化されたとは言えず、今回の「指導意見」の目的である『市場主体の退出の利便性を実現すること』は外資企業にとっては難しいということになります。
そもそもこの制度は、外商投資企業だけを対象にしたものではなく、中国内資企業をも対象とするもので、現在中国国内に多く見られる、登記は有るが実体の無い、いわゆる「ゾンビ企業」の登記抹消を簡便化して整理したいという趣旨で制定された制度であるとみるべきであり、外資企業の清算登記抹消においては、撤退手続きが容易になったということには残念ながらなっていないのが現状です。