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早いもので今年もあとわずかとなりました。
コロナ明けの今年は大方の期待に反して、中国で活動する日系企業にとってもどちらかというと厳しい一年でした。
そのような中、国家の税務政策も企業や個人に対して継続して下支えが必要という見方からこれまでの税負担軽減策を(多くの時限措置が 2027 年まで)継続する方針が年の半ばから明らかにされていました。
今回はすでに皆様にもご案内済みの個人所得税に関して、一部追加された付加控除の内容を含め今年公表された施策を改めてふりかえって確認をしていきたいと思います。
中国国家の少子化対策として扶養及び育児負担を軽減するために、財政部税務総局は 8月 31 日に、個人所得税を計算する際の専項附加控除について、3 歳以下の乳幼児の子育て支援、子女教育、高齢者扶養の三つの控除基準を引き上げることを発表しました。
昨年新たに増設された「3 歳以下の乳幼児育児者」に対する控除に続き、これは一定の所得のある者についてその納税負担をさらに軽減する措置であり、その具体的な内容は下記の通りです。
今年 1 月 1 日に遡って適用します。
※外国人駐在員でその両親等が 60 歳を超えていて健在であれば、
両親等が中国国外に居住しており、経済的に扶養していなくても享受できます。
対象となる父母のパスポート番号等を登録することで控除可能です。
【例】中国居住者で北京在住の社員Aさん。
このケースではAさんの毎月の税引前給与総額がいくらまでだと、税金負担がないでしょうか。
(注:税引前給与総額は個人負担分社会保険、住宅積立金控除後の金額とする)
個人負担社会保険住宅積立金控除後の税引前給与総額が 13,000 元までの場合、課税所得額は 0 元となり、個人所得税の負担は生じないことになります
(逆に額面給与が13,000 元に満たない場合には、適用可能な控除金額のすべてを活用できるわけではないことになります)
さらに納税者の負担を軽減するために、財政部国家税務総局は 2023 年 8 月にそれぞれに『外国籍個人に対する福利手当の個人所得税の政策の継続実施に関する公告』(財政部税務総局公告 2023 年第 29 号)、『年一回性賞与分個人所得税に係る政策の継続実施に関する公告』(財政部 税務総局公告 2023 年第 30 号)が公表されて、これらが 2027 年 12月 31 日まで適用できることが明らかにされています。
下記の各福利手当は合理的な金額以内に、有効的支出証憑をもって個人所得税の免除を受けることができます。
① 住宅手当 ② 語学研修費 ③ 子女教育費 ④ 出張手当
⑤ ホームリーブ費用 ⑥ 引越手当 ⑦ 食事手当 ⑧ クリーニング代
注)「合理的金額」の判断基準については明確な基準は公表されていませんので、必要に応じて所轄の税務局で確認することをお勧め致します。
① 住宅手当
外国籍駐在員が現金以外の形式或いは実費精算方式で取得した住宅手当を言います。
実務上は、会社が借り上げた社宅を外国籍駐在員に無償で供与した場合、または外国籍駐在員が家賃を立て替えて会社と実費精算をする場合に、有効な証憑(原則として「発票」)を取得しているものについて「非課税所得」として給与課税の対象から外すことができるとしています。
非課税取り扱い上の注意事項:
② 語学研修費
外国籍駐在員(中国居住者)が中国国内で語学研修を受けるため会社が負担した研修費用については、有効な証憑により個人所得税課税の対象から外すことができます。
③ 子女教育費
家族帯同で赴任される外国籍駐在員の子息が中国国内にある学校(例えば、日本人学校、国際学校など)に教育を受けるため、会社が学費の全額または一部を負担して支払っている場合、その費用は有効証憑を以って、適正な部分について免税することができます。(日本人学校は発票を発行できないため対象外とする地域もあり)
④ 出張手当
『国家税務総局「外国籍個人が取得する特定手当に対する個人所得税の免税に関する通達」(国税発「1997」54 号)』の規定に基づき、外国籍駐在員が中国国内・国外へ出張したことにより合理的な標準で取得した出張手当は個人所得税が免除できるとされています。「合理的標準」とはどの程度の金額なのかについて明確な規定はなく、従来は税務局に出張手当精算制度の届出(備案)手続きを行うことで「事前承認」を得られていましたが、現在は、多くの税務局ではこれを受理しないようになったため出張手当を免税として申告をすると、将来的に調査等で指摘されるリスクがあります。
「合理的標準・適正な金額」について、税務局によっては現地の官公庁部門の出張手当標準を上限としているケースがあり、この上限を超えた場合に超えた部分は課税対象とする対応も見られます。
留意事項:
企業が出張日当(手当)名義で支給するその他手当は、個人所得として個人所得税を課税する。
⑤ ホームリーブ費用
中国で任職された外国籍駐在員に支給される休暇のための一時帰国費用(ホームリーブ)費用を言います。
外国籍駐在員が我が国の勤務地と家族の居住地(配偶者と両親の居住地を含む)間を移動する際の交通費に限定され、帰郷にかかった交通費の証憑(コピー)をもとに年 2 回までが免税となります。
⑥ 引越手当
外国籍駐在員が中国に着任又は中国から離任する際に、現金以外の形式、もしくは実費精算方式で取得される引越手当を言います。
当該手当は所轄税務当局の査定後、合理的な金額範囲以内に有効な証憑を持って免税となります。
⑦ 食事手当
外国籍駐在員が現金以外の形式、もしくは実費精算方式で取得される食事手当を言います。当該手当は有効証憑を持って免税となりますが、毎月に給与と一緒に支給する「食事補助」は、個人の現金所得に属するため、免税になりません。
これは昔の中国において中国人に対する金額と外国人に対する金額の二重価格の設定がされていたときの名残でそのまま規定として残されていますが、現在この手当を支給している企業はないと思われます。
⑧ クリーニング手当
外国籍駐在員が現金以外の形式、もしくは実費精算方式で取得されるクリーニング手当を言います。当該手当は有効な証憑をもって免税となります。
これも昔の中国で外国人については政府が指定するホテル等にしか住むことができなかった時代の名残の規定で、現在この手当を支給している企業はないと思われます。
『国家税務総局「個人が取得する年一回性賞与等の算定・課税方法に関する通達」(国税発「2005」9 号)』の規定に該当する納税者の年一回性賞与は、年度総合所得に算入せず、一回性賞与を 12 ヶ月で按分し、その計算結果をもとに適用税率と速算控除額を確定した上で、年度総合所得と区別して単独で税金を計算することが認められます。
その計算式は、下記の通りです。
注)年一回性賞与を取得した時に、その取得の翌月の申告期限に一回性賞与の計算式で申告・納税せずに、年度総合所得の一部として申告・納税してしまうと、後で年度総合所得から一回性賞与の計算式での申告に変更することはできませんのでご注意ください。
ここまで個人所得税の課税所得計算時に控除できる特別附加控除と外国籍の者に適用される 8 項目の非課税政策の内容を詳しく紹介しました。
外国籍の者は、「特別付加控除」と「外国人の住宅手当•語学研修費等 8 項目の非課税政策」のいずれかを選択適用することができますが、両方の政策を同時に享受することはできません。また一納税年度内に変更することは認められません。
現在の実務状況から見ると、親会社から中国に出向で派遣されて、社宅の無償提供を受けている外国籍駐在員の場合や、家族帯同で子供の中国での授業料(日本人学校は発票が発行されないため非課税とされない地域もあり)を会社が全額または一部を負担している場合には、外国籍の者に対する免税可能手当額の金額が特別付加控除の控除可能額を上回っているため、免税手当優遇政策を選択適用するケースが多いです。
居住者としての北京在住の社員 A さん
個人所得税の金額は次の通りです。
外国籍駐在員が 8 項目の非課税政策を適用して税金計算をするに際しては、税務機関からの調査要請があった場合に備えて、会社は各福利手当の免税適用に必要な関連資料を適切に保存・完備をされるようご提案いたします。
以上
(担当:天津大野木マイツ 王 富椿・周 憲苹)
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