天津大野木邁伊茲諮詢有限公司
北京大野木邁伊茲諮詢有限公司

前年度決算の会計監査業務も終了し、企業所得税の確定申告納税が完了したことから、税引き後利益から投資者への利益配当を検討されている会社も少なくないものと思います。

今回は、中国現地法人からの利益配当手続きと税務上の取り扱い及び日本での税務上の取り扱いについて解説いたします。

ポイント

1. 利益配当は会社定款に定められた機関での決議が必要。
2. 利益処分金額の10％は利益準備金としての積み立てが強制されている。
3. 中国では利益配当額に10％の企業所得税が課税される。
4. 配当金送金が5万ドル以内と5万ドル超で手続きが異なる。
5. 日本では、出資比率25％以上で支払い義務確定日以前6か月以上継続保有する外国子会社から受け取る配当金は、95％相当額を益金不算入とされている。（当該配当に係る外国源泉税は損金不算入）

１．利益配当手続き

利益配当手続きの大まかな流れは以下の通り。

（１）利益処分決議

会社定款において利益処分決議機関を株主会と定めている会社は株主会決議により、外商投資法施行後も経過措置（※）により利益処分決議機関が董事会のままとされている会社は董事会決議による。

（２）配当可能利益額

利益配当は、税引後利益から規定に基づき利益準備金及びその他の積立金積立てた後の金額の範囲内で利益配当をすることが可能。

1. 利益準備金
   利益処分額の10％以上の利益準備金を資本金の2分の1に達するまで積立てが強制されている。
2. その他の積立金（企業発展基金、従業員福利基金）
   その他の積立金は会社定款の定めに従い積立てを行う。
   会社定款にてその他積立金の積立てに関する記載がない場合には、積立が強制されることはなく、積立額は株主会（または董事会）で決めることとされている場合には、任意にその積立額を決定すえばよい。（積立てないことも可）
3. 配当可能利益
   ＝　前期繰越利益　＋　当期利益　△当期企業所得税　△利益準備金　△その他の積立金

２．非居住者に対する配当金課税

中国居住者企業が中国非居住者企業（日本親会社等）に対して配当金を支払う場合、支払配当金に対し10％の税率で企業所得税が課されます。

当該企業所得税は配当金を支払う中国現地法人が所轄税務局に対して、当該配当金支払い時に源泉徴収し　7日以内に納税することとされています。

なお、中国国内企業に対して配当金を支払う場合、当該配当金は非課税となることから源泉徴収納税は発生しません。

３．配当金送金手続き

取引銀行による若干異なりますが、一般的には以下の書類を銀行に提出し送金手続きを行います。配当送金額により銀行での手続き書類が異なる。

1. 利益処分決議書
2. 会計監査報告書
3. 会社定款
4. 資本金験資報告書（最終入金分）
5. 送金額が5万ドル超の場合には税務備案書類
6. その他銀行が要求する書類（過去の利益処分集計表など）

４．日本での外国子会社から受ける配当金に係る課税

日本側では外国法人から受け取る配当金は出資比率の状況により課税の取り扱いが異なり。

1. 出資比率２５％以上かつ６月以上継続保有の外国子会社から受け取る配当金
   受取配当金額の９５％は益金不算入＋中国で課された企業所得税は損金不算入
2. 上記①以外の受取配当金
   受取配当金全額が益金算入＋中国で課された企業所得税は外国税額控除の対象
   なお、受取配当金の益金算入時期は、原則として効力発生日＝利益処分決議日とされていますが、例外として支払いを受けた日とすることも認められている。

５．最後に

中国現地法人の利益配当は、所定の手続きに基づき行えば問題なく行うことができますが、前述の外資投資法施行による会社組織形態や機構の変更をまだ行っていない場合には、利益配当決議に合わせて変更決議及び工商登記変更手続きも併せて行えればよいでしょう。
現地法人財務担当者と日本親会社側とのコミュニケーションに不安があるという場合や、財務担当者が対外送金や定款変更及び工商登記変更手続きに不慣れなため不安という場合には、弊社でも各種手続きのサポートが可能ですので遠慮なくご相談ください。