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中国では2017 年から新生児の出生数が5 年連続で減少しており、出生数の低下や高齢化問題がますます深刻化していることを背景として、育児負担を軽減し、出産を奨励するため、中国政府は多くの関連政策を打ち出しました。「三人子政策」「出産休暇日数の増加」「3 歳以下育児休暇」に続き、今回は3 歳以下の乳幼児の子育てに関する個人所得税附加控除政策が発表されました。具体的な内容は下記の通りです。
3 月28 日に国務院より「3 歳以下の乳幼児の子育てに関する個人所得税附加控除を設立する通知」(国発[2022]8 号)が公布されました。
中国の現行個人所得税法における特別附加控除政策について、個々の内容を確認してみましょう
これらの特別附加控除政策は納税者の世代ごとのライフステージの状況を考慮して税金負担を軽減できるように制度設計がされています。
簡単な例を挙げて、附加控除政策による納税者の税金への影響を検証します。
【例】 北京在住の社員Aさんは自身が一人っ子で離れて暮らす60 歳以上の父母が健在であり、子供が二人(1 人は小学生、1 人は乳幼児、本人全額控除)、
また住宅ローンがあります。このケースではAさんの毎月の税引前給与総額がいくらまでだと、税金負担がないでしょうか。
(注:税引前給与総額は個人負担分社会保険、住宅積立金控除後の金額とする)
① 個人所得税減費用額(基礎控除額)=5,000 元/月
② 附加控除項目=高齢者扶養+子女教育+乳幼児介護+住宅ローン=5,000 元
(2,000 元+1,000 元+1,000 元+1,000 元)
③ 課税所得額=税引前給与総額-①個人所得税免除額-②特別附加控除
=税引前給与総額-5,000 元-5,000 元
=税引前給与総額-10,000 元
個人負担社会保険・住宅積立金控除後の税引前給与総額が10,000 元までの場合、課税所得額は0 元となり、個人所得税の負担は生じないことになります。
現行の個人所得税法ですでにひとり5,000 元の基礎控除と各種の特別付加控除が用意されており、一定の所得までの者に対しては税率も低く抑えられているため、この乳幼児の育児控除を使っても、3%の税率が適用されている納税者(各種控除後の課税所得3,000 元/月相当まで)の場合は月額にして30 元の減税効果ということになります。
税法に基づき2023 年末までの期間については、外国籍駐在員は「外国籍駐在員の住宅手当、語学研修費、子女教育費」等、八項目の外国人福利手当に関する免税政策を享受するか、上記の特別附加控除政策を享受するかいずれかを一つを選択することができます。
ただ社宅賃料が会社負担である場合や子女教育のための会社負担の授業料が、附加控除額より高額となるケースがほとんどであるため、2023 年末までの期間は、八項目の外国人福利手当の免税政策を選択した方が、税負担が小さくなるのが一般的です。
税制による支援と別に、乳幼児がいる親に対して通常の法定有給休暇とは別に「育児休暇」を付与する条例が昨年11 月に公布されて施行されていますのでご紹介します。
育児休暇の適用期間は子供の誕生日を基準に「満1 歳毎」を一年間として、各地域の条例に基づき毎年の取得可能な休暇日数を下記のように定めています。
法定有給休暇は暦年(1 月~12 月)で、この特別育児休暇は対象となる子供の誕生日を基準にした1 年でそれぞれカウントしますので、消化のしかた・残存日数の管理が少し「やっかい」な制度のつくりになっています。特に適用初年度となる今年は取得する側も「急いで」消化しないと休みを取り切れなくなるという状況が生じます。
また、特定の層にのみ付与される法定福利休暇になりますので、人事・待遇上の不利益を生じさせず、また取得する側、取得させる企業側、一緒に働く周りの同僚が気持ちよくこの制度を運用できるようにするための環境づくりが必要になると思われます。
中国では子供の教育にお金がかかりすぎ、子供の精神的・身体的負担も大きいとして塾や補習校の営業が昨年から禁止されているのも「少子化対策」のひとつと思われます。
いずれにしても生活が高度に都市化された国においては「少子化対策」というのは一筋縄ではいかない難しい問題ですね。
以上
(担当:王富椿・高昆・平出)
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