最近弊社でこの工作証取得のための手続きのサポートをさせていただいた案件で、工作許可がいつまでたってもおりないという事例がありました。
天津市の所轄部門に問い合わせをすると、「システム上でストップがかけられて工作許可証の発行ができない状況が続いている」ということで、その原因として、この申請者の方は、2年半前まで日本の別の会社の社員として中国で働いており、コロナ禍により工作証を残したまま日本に避難帰国されて、そのまま事情があってその会社を退職され、中国現地でもその方の工作証の処理をしていない状況にあるということが可能性として考えられるとのことでした。
帰任に際して、過去に中国で拠出した社会保険個人負担分の還付を受けるためには、工作証の取消をすることが要件になりますので、一般的には工作証の取消をしてから帰国するということが行われていますが、帰国間際で忙しく手続きの時間が無いだとか、今回のコロナ禍やその他緊急を要する事情が生じて手続きをしないまま帰国して放置した場合には、その方が次に中国に赴任しようとしたときにトラブルとなるケースもあり得ますので注意が必要です。
この問題について、関連規定を下記の通り整理してみました。
(一)法的規定
《外国人の在中国就業管理規定》第20条は、雇用された外国人と雇用先が締結した労働契約が解除された後、
当該雇用先は直ちに労働部門、公安部門に報告して、当該外国人の就業証(工作証)と居留許可を返却し、公安機関で出国手続きを行う必要があることを明確に規定しています。
(二)連帯責任の回避
法律上、企業は外国人に対して工作証と居留許可の抹消を行った後に、雇用先との労働関係の解除がされたとみなされます。
外国人従業員の工作証の雇用先が元の会社にある場合、その間に外国人従業員が法律違反または人身傷害にあった場合、会社が連帯責任を負わされる可能性があります。
(三)個人福利
外国人が帰国を予定している場合、養老保険の払い戻し、医療保険の個人口座の一括処理などの事項を処理する際にも、外国人工作証の抹消証明を提出する必要があります。
(四)居留許可の抹消と工作証再取得の場合の取扱い
外国人が工作証の抹消手続きを行った後には、居留許可の抹消も行う必要があります。
(これも《外国人の在中国就業管理規定》第20 条に明記されています。)
抹消後から実際の帰国までの間の期間の居留のため、30 日間の臨時滞在ビザを取得することができます。
また、本社からの派遣ではなく、現地採用の外国人のケースではありますが、中国の元の就業先の会社を退職して工作証・居留許可の抹消を終えて、
30 日間の臨時滞在ビザを取得している外国人が、その30 日間の滞在中に新たに仕事を探して、新たな就業先が決まって、再度工作証を申請する必要がある場合は元の工作証の抹消証明書を提出して新たな工作証の発行を受けることになります。
(一)工作証の抹消
雇用者は、離職証明をもとに離職者の抹消手続きについて科学技術部オンラインサイトを通じて行います。
(外国人ご本人が窓口に行く必要はありません。)
(二)居留許可の抹消
工作証の抹消証明を取得した後、外国人本人はパスポート、宿泊証明、工作証の抹消証明書、離職証明書などを持って公安局出入国管理中心で居留許可の抹消手続きをします。
上記でも述べたとおり抹消後から実際の帰国までの間の期間について中国に合法的に滞在できるように、30 日間の臨時滞在ビザを取得することができます。
外国人に発行される工作証は外国人が中国で働くための合法的な証明書であり、この証明書には外国人の中国での勤務先、職務などについて詳細な記録があり、
《外国人の中国就業管理規定》第23 条の規定に基づき、外国人が登録した情報に変更や退職が生じた場合は、速やかに工作証の変更や抹消手続きを行う必要があります。