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師走となり、本年も残りわずかとなってまいりました。
本年は為替レートが急激かつ大幅に円安が進んだため、保有する外貨預金などの外貨資産を日本円に両替し為替差益を享受された方もいらっしゃるかと思います。
ところが、この為替差益は所得税法上雑所得となり、一定の要件を満たす場合を除き、確定申告において他の総合所得(給与所得等)に合算して申告納税が必要となります。
今回は、為替差損益が生じる具体例と確定申告が必要となる方について解説いたします。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
日本円 | 650,000 円 (5,000 ドル相当) | 米ドル預金 | ※500,000 円 (5,000 ドル) |
為替差益 | 150,000 円 |
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
ユーロ預金 | 1,200,000 円 (8,000 ユーロ) | 米ドル預金 | 1,000,000 円 (10,000 ドル) |
為替差益 | 200,000 円 |
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
米ドル建株式 | 1,950,000 円 (15,000 ドル) | 米ドル預金 | ※1,650,000 円 (15,000 ドル) |
為替差益 | 300,000 円 |
上記(4)の例で取得した米ドル建て株式15,000 ドルをすべて売却し、売却代金を即日日本預金に入金している場合(売却時の為替レート140 円)
税務上は次のように外貨建取引を認識します。
借 方 貸 方
日本円預金 2,100,000 円
(15,000 ドル)米ドル建て株式 1,950,000 円
(15,000 ドル)
株式譲渡益 150,000 円
⇒外国株式等の譲渡対価の邦貨換算額相当額が、株式の譲渡にかかる収入金額として取り扱われるため、為替差損益は認識されません。
為替差損益は雑所得に区分され、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・総合譲渡所得・一時所得を合算した総合所得として所得税が計算されます。総合所得課税の税率は5%から45%までの累進税率となっており、所得が高額になるほど税負担が重くなります。
また、為替差損は雑所得以外の所得との通算(損益通算)はできませんが、雑所得区分内の他の雑所得との通算(内部通算)が可能です。このため、為替差損が生じる場合には、同一年度内に他の通貨の為替差益や暗号資産の含み益などを実現化し内部通算を行うことで課税所得を圧縮することも可能です。
給与所得者については、以下に該当しない場合には、確定申告は不要とされています。
一般的なサラリーマン(給与は1 社からのみ受給)で年末調整のみで完了する者で、為替差益が20 万円以下であれば上記②に該当するため、確定申告は不要となります。
ただし、住宅ローン控除の適用を受けるための申告や医療費控除や寄付金控除などにより還付申告をする者は、20 万円以下の為替差益も雑所得として合算して申告をする必要があります。
このため、確定申告で追加される所得控除額と総合所得に加算する為替差益を比べ、確定申告で追加される所得控除額<為替差益となる場合には、あえて追加の所得控除を受けるための確定申告はしない方が有利となります。
為替差益が多額に生じるケースはそれほど多くはないと思いますが、外国通貨で外貨建て資産を購入した際の為替差損益等は見逃しやすいので注意が必要です。
また、複数回に分けて日本円から外貨預金に預けている場合には、過去の預入時の為替レート及び円換算額は、その後の外貨建取引時における為替差損益の計算に必要となることから、外貨建て資産を取得した場合等には、取引時の為替レート、外貨額及び円換算額を記録として残し、後日の申告対応に備えておいた方が良いでしょう。
以上
(担当:中国大野木会計グループ 安達)
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