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5月8日にコロナ感染症分類が変更されたことや水際対策の廃止により、日本親会社から中国子会社等への出張を再開された企業が増えてきており今後も増えてくるものと思われますが、中国出張の目的や実態が中国子会社に対する支援活動が含まれる場合には、税務上注意を要します。
具体的には、中国子会社に対する活動がグループ内役務提供に該当する場合において、適切な対価を得ていない場合には海外子会社に対する寄附金課税の問題が生じます。
このため、中国子会社への出張が中国子会社に対するグループ内役務提供に該当する可能性がないかを検証し、該当する場合には中国子会社側と従前の業務支援に関する取決めの見直しや新たな取決めを行う等の対応が求められます。
以下、グループ内役務提供の税務上の留意点について説明いたします。
日本親会社が中国子会社に対し何かしらの活動を行った場合に、当該活動が「経済的又は商業的価値」を有する場合には、企業グループ内役務提供に該当する可能性があります。
中国子会社が本来自ら行う必要のある活動であり、その活動を第三者が行う場合には有償となる活動は、「経済的又は商業的価値」を有するものとしてグループ内役務提供と判断されます。
なお、移転価格税制事務運営要領には具体例として、以下のような活動が挙げられています。(※2)
【グループ内役務提供の具体例】
上記(1)に該当する活動であっても、次に該当する活動はグループ内役務提供には含まれないとされています。(※3)
上記判断要素に基づきグループ内役務提供に該当すると判断された場合には、当該役務提供の適正な対価の額=独立企業間価格を検討することになりますが、一定の条件に該当する場合には総原価に総原価の5%を上乗せした金額や総原価を独立企業間価格とすることが認められる場合があります。
グループ内役務提供の対価算定方法は、取引実態に応じ最も適切な方法を選定する必要があるとされていますが、原価基準法と同等の方法が最も適切な方法である場合には、以下の要件に該当するグループ内役務提供は、合理的に配分した総原価に当該総原価の5%の金額を加算した金額を独立企業間価格とすることができるとされています。(※4)
上記グループ内役務提供の取扱いは、従前と取り扱いが変わるものではありませんが、中国出張再開に際し、関連部署や中国子会社の協力の下、日本親会社と中国子会社間の取引や支援業務の実態を再度確認の上、海外子会社に対して行う活動が上記のグループ内役務提供に該当するものか否か、対価設定の合理性について適切か否か等の検証をしておいた方が安心です。また、従前の契約の見直しや新たな契約締結が必要な場合には、日本側の税務リスク回避も重要ですが、中国現地側での税務取扱いや税務リスク対応コストも踏まえ日本親会社及び中国子会社双方にとってバランスの取れた対応が望まれます。
参考資料
※1 租税特別措置法(以下「措法」第66条の4第3項
※2 移転価格事務運営要領3‐10(1)
※3 移転価格事務運営要領3‐10(2)、(3)
※4 移転価格税制事務運営要領3—11(1)
※5 移転価格税制事務運営要領3-11(2)
※6 移転価格税制事務運営要領3-11(3)
その他参考資料:移転価格税制の適用に当たっての参考事例集:【事例5】、【事例26】、【事例28】
以上
(担当:中国大野木会計グループ 安達)
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