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2021年から中国企業会計新準則で適用されている新リース準則に基づく会計処理は、これまでの実際に発生したリース料を費用計上するのではなく、個々のリース契約についてバランスシート(貸借対照表)上で、リース契約期間に支払いが必要となる金額全額を貸方の負債科目である『リース負債⁻支払リース料』として認識し、借方の資産科目にその割引価値に相当する金額を『使用権資産』として、割引部分に相当する差額を負債科目の『リース負債-未認識融資費用』としてそれぞれ認識することが必要になります。
会社の期間損益を適正に把握するため、または税金の対象となる課税所得を計算するためであれば従前の「実際に発生したリース料を費用計上」すればよいのですが、この新リース準則の主たる目的は、会社が締結しているある程度財務上にインパクトがあると思われるリース契約について、その契約に基づく権利と債務の金額を貸借対照表にオンバランス化することで、その会社の財務資料(決算書)を見た投資者や債権者により詳細な情報を提供して投資判断等をしてもらうという点にあります。その意味ではPL(損益計算書)よりもBS(貸借対照表)をより重視した処理といえます。
出資者が親会社等の上場していない外商投資企業で、金融機関からの借入もしていない場合には、新リース準則に基づく会計処理の採用は「めんどくさい」だけのように思ってしまいますが、ただルール上は中国企業会計新準則を採用している企業は新リース準則に基づく会計処理が原則強制適用ということですので、ここで、新リース準則に基づく会計処理のおさらいをしていただければと思います。
下記のような簡単な例を使って説明いたします。
例:A企業は事務所賃貸契約(賃貸期間2021年1月1日から2025年12月31日まで)を締結した(毎年賃貸料20万元を支払、年利率を5%として計算)
会計上で新リース準則により処理を行った場合には、年度の企業所得税確定申告の際の課税所得の計算において、上記会計上の原価費用金額(使用権資産償却費と利息費用)をすべて課税所得に加算して、税法上の控除額である期間対応による支払いリース料を課税所得から減算することで、税金計算の基礎となる課税所得を算定します。したがって税金計算上は、新リース準則を採用していない状況と同じ結果になります。
このように、新リース準則による処理はあくまで会計上の論点であり、より適切な情報を決算書に反映させるためのものであるということがお分かりいただけると思います。
新リース準則の適用の意義と影響をまとめると以下のようになります。
項目 内容 旧リース準則
(2006版)新リース準則
(2018版)
リース準則採用の意義 資金の時間的価値を反映する リース費用を期間ごとに割り当てる方法 徐々に低下するモデルであると同時に、財務費用に対しても償却を加速させる効果があり、経済業務の実質をよりよく反映することができる
リース物を資産化する 賃借人のオペレーティングリースは簿外資産となり、企業の資産負債率を下げる一方、契約義務及び解約コストが反映されない 賃借人が使用権資産とリース負債を確認する方法は、貸借対照表をより合理的にし、管理者または出資者・債権者がリース資産の使用権とリース料の支払い義務を十分に識別し、企業の財務諸表をより全面的に把握することができる
財務諸表への影響 貸借対照表 貸借人はオペレーティングリースを簿内処理する必要はないため資産に関する評価データを粉飾できる 賃貸人は、オペレーティングリースによる使用権資産とリース負債を確認する必要があるため、資産と負債が同時に増加する。
資産が増えると、資産回転率が下がる
損益計算書 オペレーティングリースは定額法によるリース費用の確認を行うので、利益への影響は比較的固定している 定額法により使用権資産の減価償却を計上し、償却原価法を用いて関連負債の利息を計量する。毎回の減価償却額は固定的であるが、関連負債の償却原価は賃貸料の支払いに従って徐々に減少し、利息もそれに伴って低下し、総賃貸原価は年々減少し、利益には「前小後大」の影響モデルになる
キャッシュフロー計算書 オペレーティングリースの取引に係る現金支払は、営業活動に係るキャッシュフローに属する リース債務の弁済に対して資金調達活動のキャッシュフローを計上するため、経営活動のキャッシュフローの純額は減少し、資金調達活動のキャッシュフローの純額は増加する。
企業所得税への影響 リース準則採用の場合の課税所得調整 支払リース料を表計上
発票を入手できている前提で課税所得調整無使用権資産の減価償却と未確認融資費用は、税引前控除が許可されていない。企業は確定申告時にこの金額を課税所得に加算するとともに、実際に支払ったリース料を減算処理する。
なお、新リース準則の採用に際して財務担当者は次の点にもご注意ください。
以上
(担当:车冠樱・张欣)
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